物理チャレンジ2021 第1チャレンジ実験課題レポート表彰



実験優秀賞
 
 窪田 煌志
   岐阜県立大垣北高等学校 岐阜県立大垣北高等学校 1年生
  『等速円運動を利用した運動方程式の検証

(講評)今回の実験課題を理解し、力と加速度を定量的に測定可能な方法を見いだし、また不確かさ(相対誤差)が小さくなるように工夫された装置を考案したところに特長をもった実験レポートである。高速回転するおもりの位置の測定に対しても、限られた範囲内で工夫していることに好感がもてた。おもりにはたらく向心力を一定とした(1/おもりの質量)vs(加速度)のグラフ、おもりの質量を一定とした(向心力)vs (加速度)のグラフはわかりやすく教育的でもある。不確かさの考察が明解で、良質な実験として高く評価できる。

 土居 寛市
   東大寺学園高等校 2年生
   『力と物体の運動の関係

(講評)実験原理は教科書にある実験とほぼ同じであるが、それを精度の高い結果を得るために工夫し、系統的かつ丁寧に行っていることに特長がある。滑車、台車などの実験装置を自ら製作したことにも好感が持てた。自ら製作した装置であるなら、その癖も理解できていると思えたからである。実験方法は、誰もが再現(追試)できるように詳細に記述されていることも評価できる。不確かさ(誤差)の定量的な分析のために追実験を実施し、誠実な態度で実験を行っていることが読み取れた。

 西尾 朋人
   石川県立金沢泉丘高等学校 石川県立金沢泉丘高等学校 3年生
   『加える力と物体の運動の関係

(講評)独自の実験を工夫し、考察も十分な非常に優れたレポートである。実験1では、斜面を転がる球の速度を位置の関数として求め、回転を考慮した考察を行っている。実験2では、滑車と重りで一定の張力を加え、加速度を計測している。質量と加速度の関係を求め、動摩擦力の影響をグラフから考察している点が評価される。実験4では回転体に加わるトルクと角加速度の関係を実験的に求め、慣性モーメントを実験1の結果に適用し、一致することを確認する考察を行っている。得られたデータを素直に、論理的に受け取り、合理的に考察を進めている点が高く評価される。

 何 櫟
   茨城県立竹園高等学校 茨城県立竹園高等学校 3年生
   『レーザ測距センサを用いた力の大きさと速度変化の関係 および質量と速度変化の関係の測定

(講評)様々な可能性を考え、できるだけ不確かさを減らすように丁寧に考えて実験が計画されており、優れたレポートである。独自に組み立てたアトウッドの機械にレーザ測距器を組み込み、系統的な測定を効率よくかつ精度よく行う工夫が素晴らしい。単に便利な計測器を利用するのではなく、その特性について十分把握し、精度良く測定するための工夫が随所に見られる。左右のおもりの質量の和を一定にして力と加速度の関係をもとめ、左右質量の差を一定にして質量と加速度の関係をもとめる、合理的な測定方法を採用している。さらに、初速を与えて滑車の回転方向が途中反転することを利用して滑車の影響を相殺するアイデアは秀逸である。実験方法は粗削りな印象はあるが、独自性があり、好感が持てる。滑車の質量の影響や、空気の浮力、空気抵抗などの影響も見積もり、考えられうる影響を丁寧に検討していることには畏れ入る。データの処理は、試料標準偏差を算出し、最小二乗法を用いて分析している点は高く評価できる。単に表計算ソフトの機能をブラックボックスとして利用するのではなく、正規方程式から算出しているのには畏れ入る。グラフはいずれも適切にわかりやすく記述され、模範になる。


実験優良賞

 石 叶唯
   愛媛県立新居浜南高等学校 愛媛県立新居浜南高等学校 3年生
   『ブロワーの風力を用いた運動の第2法則の検証

(講評)レポート全体を通して、課題解決に向かう流れが分かりやすい。一定の力を加える方法としてブロワーを用いる工夫が良い。しかし、物体の速度により風から受ける力は変化する可能性があるので、検証の必要性がある。摩擦の影響を減らす工夫や、車輪の慣性モーメントを考慮してみかけの質量について考えるなど、より正確な結果を出すための努力を惜しまない点が素晴らしい。結果の解析や考察においては、理論的にも良く考えられている。また、グラフを上手く使い、質量と加速度や力と加速度の関係を明瞭に示すことができている。

 三輪 栞太郎
   石川県立金沢泉丘高等学校 石川県立金沢泉丘高等学校 2年生
   『物体の並進運動・回転運動と働く力の関係

(講評)重さや形状の異なる複数の物体の斜面上での転がり運動を調べ、運動方程式から予想される運動と比較検討した実験レポートである。特に後半の実験では、定規を付けたスマートカートにスマートフォンを載せて、転がる物体と並走しながら撮影することより、物体の重心運動と合わせて回転運動も記録する優れた実験的な工夫をしたことが評価される。この測定から斜面上の転がりでの滑り率がほぼ1%以下との結果を得た。実験結果と運動方程式からの予想を定量的にかつ丁寧に比較しており、優れた実験レポートである。

 山本 裕太
   灘高等学校 1年生
   『二種類の方法による運動の法則の検証

(講評)この実験レポートでは、2つの方法で実験を行い、力と加速度の関係を求めている。求めた力と加速度が比例の関係になり、比例定数が質量になることから、求めた比例定数と質量を比較し、考察を行っている。1つめの方法は、円錐振り子の頂角と周期を求める実験を行っている。頂角は2つの方向からカメラで撮影して求め、周期はストップウォッチで測定している。力と加速度の関係を円錐振り子から求める発想はユニークであり、測定にも工夫が見られる。また、得られた結果について、様々な角度から解析を行っていて評価できる。2つめの方法では、斜面において物体を転がし、斜面の角度と加速度を測定している。回転運動における慣性モーメントを考慮し、この実験においても、力と加速度の関係を求めている。この方法においても、得られた結果について、十分な検討が行われている。実験を行う際に考慮しなければならない点もよく考えられている。実験方法の記述もわかりやすく、結果の記述、検討も十分である。大変優秀なレポートである。